不思議な事が起きた。
僕の故郷には大正7年に実際にユートピア(理想郷)を作ろうと開拓された村がある。
通った母校では白樺派の文学者武者小路実篤の言葉を復唱していた。
「勉強 勉強 勉強 勉強のみよく奇跡を生む」
大人になって絵描きの友人とぶらり尋ねたこともある。
時より思い出し帰る事がある。
武者小路実篤『一個の人間』は最高です。
子供のころその村でよく遊んだ。
村の入り口には大きな沼があってそこには人を丸飲みするほどの巨大なナマズがいた。
濁った水面を揺らす背びれにマジでビビった。
その迷信も大人になって理解する。
村にはみんなにマッタさんと呼ばれる東京弁の夫婦がいた。
大人になって絵描きの友人とぶらり尋ねた時は木製の織り機を作ってた。
奥さんは優しい方で子供の僕らを見つけると手招きをしてパンをくれた。
チョコチップメロンパンのように見えるパンをくれた時だけは帰りにナマズにやった。
大人になって絵描きの友人とぶらり尋ねた時も熟したミカンだった。
昨晩ひさしぶりに思い出し帰った。
絵描きの友人が開いた「日曜日だけの喫茶店」にも行かねば…。
武者小路実篤の『一個の人間』は、チャーリー・チップリンの『独裁者』と同じ事を言っていると僕は思う。
帰って、昨日奥さんが亡くなった事を知った。
虫の知らせってあるんだな~。
突如吹く隙間風と、立てつけの悪さによる心の揺れに忠実でいたいと思った。
不思議な事が起きた。
不思議な事を起こしたのかもしれない。虫の知らせ。kmine